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No.97 不実な美女か貞淑な醜女(ブス)か 米原 万里

2009.04.03.20:40




読書時間:20分

大学の課題として出されたもの。
読書感想文で良いとのことだったので、本当に読み取ったこととそれに対する軽いレスポンスを含ませただけの文章になってしまった。かかった時間は読書時間を含めて1時間程度。一応これでもワードだと5枚分くらいにはなったので、指定された枚数を軽く突破した(確か最低は1枚とかだった気がする、ちょろい課題である)。
こういう軽い課題だったらどんどん出てきても問題に感じないのは、フォトリーディングとマインドマップの組み合わせのおかげなのかもしれない。
本気出せば人間とは最低でも1時間でこれくらいの量は稼げるということがわかった、良い体験だった。


以下、本文。


 この本でもっともよかった点は、この本が著者や他の翻訳家の具体例を多く含んでおり、それに基づいて話が進んでいくということである。そこから学んだこととしては様々なことがあげられるが、ここではそれを表明する方法として、章ごとに感想、考察を加えていきたい。

「第一章 通訳翻訳は同じ穴の狢か」について

1通訳は送り手と受け手両方に依存するということ
実際私が今までなんだかんだ強く意識していたのは送り手から得られる情報をいかに訳していくか、ということであったのだが、実体験を伴った例を見て「受け手にいかに伝えるのか?」ということの大事さを改めて認識することが出来た。実際あちらに伝わらないような表現ではいかに正確に訳していても伝わらない。通訳者の主眼はコミュニケーションにあるのであり、完全に相手の言葉をコピーするということは通訳者の仕事とは多少ずれるということを実感した。

2タブーに関して
通訳という仕事をするうえで、タブーをいかに表現するかということは非常に重要な問題になってくる。筆者はタブーを増やしていくことに懐疑的であり、それはいたずらにいたちごっこを生んでしまったり、言葉そのものにタブーされたことによる魅力を付け加えるだけなのではないかということを言及しているが、私もそのように考える。とはいえタブーに関しては通訳者がどうにかしても根本的に解決できる問題ではないから、ひとまずとるべき措置としてはタブーに問題意識を持つということなのかなと思った。

3翻訳者はブラックボックスである
これは通訳という問題を越え、認知科学的にも非常に面白い問題である。実際インプット、アウトプットというのは見えるけれども、それを処理するプロセスは見えない。翻訳者というのはまさにこの見えないプロセスをつかさどっているのであるが、同時にそれが翻訳という職業を魅力的に、そして難しいものにしていると感じた。また、この話に関連付けられて、通訳者は基本的に文系であり、仕事に当たっては門外漢のことをやらされることが圧倒的に多いということに関しても頭を悩まされた。実際の仕事では専門的知識を要求されることが非常に多いことが予想され、もちろん事前に勉強する必要はあるけれども、それだけでは対応しきれない場合についてどうするかについて考えさせられたのである。しかし筆者は同時にこのことを楽観的に見ており、むしろ文学者などのほうが翻訳者としては有利なのではないかとすらしている。筆者いわく理工を専門にしていた学生というのは通常扱う分野が狭いものであり、そこから翻訳対象への距離感を測ることが出来てしまうが、文学者はすべてにおいてよくわからないので、むしろ向こう見ずな行動をとることが出来るからということである。確かに幅広い分野を普段から抑えておき、仕事に当たっては専門知識についても勉強するのは基本的なことではあるが、知識を下手に蓄えたせいでこの向こう見ずに体当たりしてみる、という性質を忘れてしまわないようにしたいなと思わされた。

「第2章 狸と狢以上の違い」

1メモについて
授業や友人の考えを通して、私自身メモの大事さについては深く認識しているつもりではあったが、筆者はさらに論を進め「メモをとる能力が通訳の能力といっても過言ではない」という意味の発言をとっている。ようするにここで求められるのはいかに情報を抽出しメモに抑えるかという点、そして短期記憶をいかに持続させるかという点なのだろう。短期記憶の容量は大体7+-2程度ではあると言われるが、覚えることに関心を持ったり物語性を見出してみたりすることで、なるべく多くの事柄を処理するようにする必要があるということを自覚させられた。

2冗語性について
ともすれば神業のように思われがちな通訳作業であるが、冗語性という点に着目することでその負担を大きく減らしているということに私はもっと着目すべきだと思った。後述されているが、冗語性というのは演説者がその人の専門分野を取り扱う際には増え(60パーセントから90パーセントとしている)逆にまったくわからないような分野では冗語性が著しく減少するとしている。スピーチをする人が専門分野以外を取り扱う場合はよりいっそうこちらとしても基礎知識を抑えておくなどの対応が求められるということがわかった。

「第3章 不実な美女か 貞淑な醜女か」

   タイトルの意味するところは、つまり翻訳の型を場合において使い分けろということである。もちろん望ましいのは貞淑な美女なのだろうが、一般的にそのような状態を保ち続けるということは不可能に近いわけであるから、現実的に考えた場合使い分けが大事になるわけである。この観点は私の発想から抜け落ちていたので、読んでいるときは目が覚める思いであった。もっとも実際に通訳に携わる場合、自分自身がここまで今意識できるかというと難しい。ただ、毎回毎回きれいな表現をする必要はないし、相手の表現を逐一正確に伝える必要はないということを「型」として抑えられた事に関しては自分にとって意味があったことのように思う。

「第4章 初めに文脈ありき」

1文脈の重要性
すでにここまででも述べられているように、通訳とは情報を抽出する技術といっても過言ではない。そこで、文脈というものが非常に重要になってくる。とかくあわてがちになってしまう通訳という作業であるが、まず次の情報を待ってみる、ということがいかに大切かということについて教えられたことが多かった。

2シャドーイングの有害性
このトピックは私が今まであまり深く認識していなかったため、非常に興味深いものだった。筆者が言うには、シャドーイングをしても情報を抽出するという、通訳者にとってかかせない習慣が養われることはなく、むしろシャドーイングなどの訓練を過度に信頼することは危険なのではないかとしている。ということは情報の抽出という点に絞ったトレーニング方法が求められるということである。相手の会話から頻繁に出てくる単語や概念に訳者の脳内でタグをつけ、それを他のタグと関連づけて処理していく。このようなことを目的としたトレーニングがもっと多く取り入れられるべきなのではないかと感じた。

「第5章コミュニケーションという名の神に仕えて」

1母国語の大事さ
通訳というものに対して関心を抱く際、どうしてもその母国語以外の言語に気をとられてしまっていたのでこの点は非常に反省させられた。著者は日本の学校教育において母国語教育が軽視されているのを非常に憂いている。よい通訳者だと思わせるためには美しい日本語を操らなければならないという言葉は耳に痛かったが、自分がその立場にいたことを想像した場合確かにそのとおりであるように思えた。

2殺意と通訳をすることの喜びについて
  著者がたびたび通訳をしていると殺意を抱きはじめるというのが体験談として面白い。通訳者は話し手と受け手をつなげるデバイスになる必要があるが、そこでは自分というひとつの個性を他人にある程度占領させる必要がある。そのため通訳者は時たまそれに耐え切れなくなるというのが著者の言い分であるが、実際自我の強い自分にとってこれは実につまされる話である。ただ、著者は最後救いのように通訳をすることの喜びについても言及しており、そこでは自分自身がコミュニケーションを作っているという実感であるとした。まさしく自分がいなければその場におけるコミュニケーションというものは発生しないわけであり、通訳者はこの点で創造主、空間の支配者ということが出来る。これは自己がなかなか表現出来ないのではないかと考えていた自分にとって、新しい示唆を与えてくれた。


総評
話全体として、割と下ネタも散見され、その点でも本書を面白く読むことが出来た。実際に通訳者になることの苦労、そして喜びについて読むことで、通訳をするということの魅力がよくも悪くも増したように思う。本書にも記載があったが、通訳者の仕事のひとつの喜びとしてあらゆる職業を追体験できる機会が与えられるということがある。これは自分の内的世界を広げることを生きがいに感じている私にとって非常に魅力的なことであり、数々の苦労を超えながらその波を乗りこなしている通訳者に対して私は尊敬の念を抱いた。

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