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対話347 東 浩紀 (編), 北田 暁大 (編) 『思想地図〈vol.1〉特集・日本』

2011.06.20.20:04




個人的読みやすさ:C
読書時間:2時間超


 なぜ「少数者」が問題になったのかと言えば、それは彼らの存在自体が、「総中流社会、豊かで安定した日本社会」という大衆的なナショナリズムの自画像への、アンチテーゼになり得たからである。(pp.109)

日韓は、ナショナリズムや民族主義について、最も良質な知識人同士の間でさえ、直接的な意見交換ができる段階にはいまだない。その状態で、それ以外の人々に和解を求めることなど、無理な相談である。ナショナリズム以外に対話すべき、たがいに知るべきことが、まだ多すぎるのである。(pp.115)

 言い換えれば、日本人が従来から続けてきた西洋人の視線を介した自己認証という図式が通用しない事態が、おそらく史上はじめて訪れたのだ。(pp.123)

まとめると、(a)音楽とマンガ・アニメの記号論的な差異(キャラクターに対応する存在者が音楽には見出しにくい)、(b)対象のパブリシティに必ずしも依存しない素材の選択戦略、の二点で、オタク系文化とDJ文化のデータベース消費は異なるかたちをとる。(pp.156)

つまり、より重要なのは、ある要素がいったいどこに由来するのかという文化的所有権に関わる問題ではなく、むしろ個々の要素を取捨選択するように働きかけ、特定のやり方で情報を処理しようとする文化的様式にまつわる問題なのである。(pp.188)

(中国の)80後の文学は、作家周辺の情報をあまりにも深く組み込んでいる。彼らの文学の下部構造は、「作家」と「作品」を分割するどころか、その両者を曖昧に溶かしこんでしまっているのだ。したがって、作品を読むことは、大なり小なり作者も同時に読むことを意味してしまう。(pp.189)

 大陸ではそれは作家のアイドル化として、台湾ではウェブの書き手の存在感を誇張することとして現れる。それに対して、日本のACG文化では、もっぱら架空のキャラクターを立ち上げ、さまざまに変換しようとする文化的計算が根付く一方、作者についてはそこまで大きなコミュニケーション上の重要性が与えられていない。(pp.203)

(日本人でナショナリズムの高い人々に関して)だけど、これが正しいのかどうか少々疑わしい前提で、いくつかのデータを見てみても、自分を経済的な強者だと思っている層に多い。(pp.262)

結局、この功利主義にある意味対抗できるのは、合理性を超越するものとして見なされている「宗教性」であろう。我々は具体的な「信仰」を失ったといっても、このような場面で再び「宗教性」を召喚してしまうのである。(pp.304)

要するに、あまりにも進んだエンハンスメントは、これまで人間には責任がない「運命」として需要されてきたもの(病気、障害、体質などの不条理)を、単に克服すべき「ノイズ」として処理しかねない。(pp.309)

 ではもう一つ、現代的な「宗教性」が見られる領域として、「セラピー文化」を取り上げてみたい。社会学者の小池靖は、現代に竜駐する臨床心理学(カウンセリング)を重んじる風潮や癒しの実践などをまとめて「セラピー文化」と名付け、それにいわば代替的な宗教性を見出して分析しているが、この「セラピー文化」では、カウンセリングに典型的なように、社会に「再結合すること」が重要視される傾向がある。別言すれば、「セラピー文化」には社会変革よりも、自分が変わって社会に合わせることを重んじるような保守性があり、それはしばしば指摘、批判されている。(中略)ただし、小池も指摘しているように、「セラピー文化」も単なる現状追認の営みではない。セラピー文化には、「弱い自己」を受け入れつつ、現行の価値(つまり自分を弱者たらしめている「不当」な価値観)を相対化し、変革する力の兆しを見せる側面もあるのだ。(pp.312)

このような「まつろわぬものの声」を聴き続けること、自らの「宗教性」をノイズとして処理せずある意味「飼い慣らす」こと。このような実践がこれからのわれわれの「スピリチュアリティ」の進展および維持の最低条件ではないだろうか。(pp.313)


 本書は日本に関連した、という制約はあるものの、比較的幅広い思想やらデータやらを取り扱っているのでなかなか全部に言及するということは出来ない。ということで、このブログでは特にこの本で原稿を書いている人の専攻に多い「社会学」と僕のやろうとしている学問である「人類学」の、僕が思う違いについてでも書こうかなと思う。

 まず前提として、「人類学」は「社会学」に非常によく似ている学問だと取り扱われることが多い。
似ているも糞も、そもそも「人類学」って何さ?アフリカ行くの?みたいな反応のほうがどちらかというと多いんだけど、うちの大学でも社会学と人類学は一つのデパートメントとしてまとめられているし、まあ公式的にはそういう認識が多いのだということにしておく。うちの大学に限らずとも、たとえば社会学よりな人類学をやっている大学院とかも僕がざっと見た感じ多いので、似ている学問だと取り扱われること自体は別にそこまで間違っていることではない。事実、社会学と人類学の一部は、少なくともクロスオーバーしている。

 だけど、人類学専攻の僕としてはそこまで社会学の分野に親和性は感じていない。
今まで僕が取った社会学の授業なんてたかがしれているし、社会学に関する書籍もそこまで多くは読んでいないというのもある。僕が人類学専攻といっても、実際は心理学にかなり近い分野をやっているというのもある。しかしそれよりも、多分僕がちょっと自分の専攻とするにはイデオロギッシュすぎるというか、ある思想を持ってそこから世の中を切り取ったり、それを時に他人の思想と戦わせるという社会学(というか思想全般)でよく見られると思われるそのアクティビティ自体にそこまでの魅力を感じていないのだ。

 そしてそれこそが、人類学を専攻する人と社会学を専攻する人との一つの大きな違いなのではないかとも思う。
人類学は基本的に相対主義である。というより、一時期の自文化至上主義の反省という意味合いがこの学問では強いので、必然的に文化相対主義的にならなければならない。究極的には不可能と言えど、人類学者はなるべくバイアス、つまるところ思想、を取り外して現象を観ようとする。ここに人類学が現象学的思想と相性の良い理由がある。

 僕の知る限り、社会学は、特にそれが持つ思想性は、それとは間逆である。多分だけど、社会学において相対主義というのはそこまで重んじられたものではない。それどころか、むしろ忌避されるべきものなのではないかと思う。それは意味合いとして哲学において相対主義が叩かれるのとはまた違うのだろうけど、ともかく。社会学は例外があることは認めつつも、しかし一つの見方を持つことで大勢を把握することを目的としている学問なのだろう。まさに、社会というマクロを見ている学問。

 大して、人類学は一般化も結構普通にしているとはいえ、基本的には人間を見る学問であることから、比較的マイノリティに目を向けやすい学問であると言える。どっちが良いとかではない。ただ、僕の個人的な趣向としては人類学のほうがマッチしていると現状では思うし、多分それはこれからもなかなか変わらないのではないかな、とはぼんやり思う。このへん、僕のバックグラウンドが心理学にあることとも関連するのかもしれない。心理学は(というと広すぎるが)、科学であることを指向するがゆえにそこまで強い思想性を持たない。精神分析などになるとまた話は変わってくるけれども、しかし精神分析は心理学の中では基本的に異端扱いされているのでここでは省略する。多分僕は事象そのものを、なるべく生に近い形でみたいなと思っているのだろう。おそらくここに心理学から人類学に転向した一つの理由もある。

 人類学は、その扱う範囲や質的な性格を共有しているという意味で、社会学とある程度似た部分を持っている。けれども、社会学とはかなり違う学問的性質を持っているのであり、その性質それこそが、一つの大きな差異を生みだしているのであるなと思う。

 ちなみに余談にはなるけれども、人類学の持つ俗離れ感が理由なのか、社会学と心理学がかなりの人気学問なのに比べ人類学の人気はあまりない。これは日本だけで見られる現象なのではなく、実際に僕がアメリカにいた時も心理学と社会学の授業はすぐに埋まってしまうのに比べ、人類学は余裕でどれでも取ることが出来たので割と広く見られる現象なのではないかと思う。事実、僕もなんだかんだで人類学を専攻にしたけれどもそれまでは人類学を専攻するということはまったく考えていなかった。これは人類学の扱うトピック(と主に考えられていること)が、一般的にはなじみのないものをよく扱っているということに起因しているのかもしれない。人類学の場合、トピック自体は比較的どうとてもなるので、むしろ喧伝すべきはそこではなくて、参与観察とインタビューという研究手法の魅力のような気もする。

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2011.06.21.00:36

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: タイトルなし

2011.06.21.03:42

おお、僕はあんまり社会学の歴史というか内部構造に疎いので非常に興味深い意見。
量的なものを求めるのはやはり(社会)科学を標榜してるからなのだろうけど、どういう変遷をたどって今の形になったのかはもう少し調べてみたいな。ありがとう!
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