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対話374 西尾 維新 『囮物語』

2011.09.17.20:08




読書時間:2時間
個人的読みやすさ:A


人を好きになるのに理由はいらない――ってのも、一瞬だけ納得しそうになる聞こえのいい言葉だけれど、そんなわけないでしょ。さっきも言ったけど、どんな理由でもいいから、理由はいるよ、たとえ後付けでも。たとえそれが、自分にしかわからない、誰にも納得してもらえない理由でも」
(p.179)



 今更の『囮物語』レビュー、という感が満々に漂っているので、いくら『囮物語』レベルの人気作品であっても、内容とはほとんど関係ない自己満足の読書感想文を僕がこの辺境のブログの地で書き散らしたとしても誰からも文句は言われないだろう。そもそも、僕は基本的にここでの読書感想文では、その本から触発されたことを書き散らしているだけなのだ。
 ということで、『囮物語』の内容には特に触れず、上記の引用について思ったことを。

 理由付け。それはかなりの部分、意味付けと言い換えることが出来る言葉。
上記の引用はかなり的を射ている表現だなあと思う。意外にも、というか、少なくとも僕の経験ベースでは、何か端的な理由があって何かを始めるとか、あるいは何かを変えるということはなかったりする。

 心理学ではよく言われることだけど、人間の「記憶」というものは必ずしも過去の再生を意味しない。
どちらかというとそこで行なわれるのは「過去」の再創造だ。
新しく創るのだから、ところどころ「正確」ではないところがあるし、そこに付与された感情だとかもその時のコンテクストとかで変わってくる。記憶の再生、特にエピソード記憶の再生は存外クリエイティブな作業なのであり、ある種「物語」を作り出す作業にそれは似ている。

 つまり、今明確な理由を持って何かをしているのだとしても、それはその後に作られたストーリーに則って動いているのであり、初動はそこまで関係なかったりするわけなのだ。
そういう意味で理由は、意味づけは、物語は、非常に後付け的に人生に張り付けられている。

 では何故理由がその後必要になってくるのか?というところへ次に思考が移動する。
最初明確な理由がなく始まったものでも、上記の引用のように「明確な理由」をしばしば必要とする。それは他者から求められる状況が多いというのもあるし、自分自身が求めるということもある。

 理由とは「固定化」させるものだ。偶発的に生まれたもの――たとえば恋心――を固定化させるために、理由が、意味が、物語が、言葉がという魔法が必要なのだろう。それを欠いたものはよりイメージだとかフィーリング、直観に近くなる。こうしたものは言葉という固形物に比べ、より流体的であり移ろいやすい。明確に言葉で表わされる理由というのは自分自身を縛るために、それに固執するために必要なことだ。

 と、ここまで書いたところで逆の考えも同時に生まれてくる。
つまり、理由という言葉を用いることで、固執化を逃れるという考え方である。

 これは上に書いたことと相反するが、しかし同時にそういうこともあり得るという気もしてくる。
じゃあどっちやねん、っていう話になるんだけど、言葉に(つまり理由に)落としていないものと言うのは不定形というか、今一実態がつかめておらず、故にそれから離れることが出来ないという現象がある。

 ストレス対策の一つの方法として「何故それが嫌いなのか」をノートに書かせて、それを対象化することにより心の平静を得たり原因を解決したりという方法があると思う。僕が言いたいのはそのことである。
 なので、好きな理由を述べさせることによってよくわからない存在であったそれを対象化させ陳腐化させるという方法も同じくあり得る。

 んじゃーここで月火ちゃんが狙っているのはどっちなの?と考えてみると多分前者あるいはどちらでもないのだろうけど、理由を考えたり意味づけを狙ってみたりして「言語化」させたほうがその場合良いのか悪いのか、そもそも「言語化」させることの効力とは何なのだろう?あ、ちなみにこの小説は超面白いので今まで物語シリーズ読んだことない人も試しに読んでみると良いと思うよ。ぐだぐだの感想文で御免申しあげます。

「被害者って楽でいいもんねえ。みんな同情して、やさしくしてくれるもん。被害者軽視なんて言葉もあるけれど、あれも『加害者も被害者だ』って言ってるだけだもんねえ」
(p.35)

『事件』になって、それを『解決』するというのは、大切なひとつの『ぎしき』のようなものなのだと言います。
(p.44)

「困ったときに謝ってすませてしまうのは、とてもよくないことなんだよ――ごめんですめば警察はいらないといいうあの言い回しの意味は、みんなが思っているよりもずっと深い」
(p.57)

「被害者なんていねーんだよ。この世にいるのは加害者だけだ――どいつもこいつも、とんだ勘違い野郎ばっかりだぜ」
(p.60)

「そ、そんなの見つけられるわけないじゃない……、つまり何もわからないってことじゃない」
「まあ、そういう言い方もできるな」
 そういう言い方しかできません。
 日本語の表現の幅はそこまで広くはないです。
(p.100)

「いやいや、本当にわかっていないのは、自分が子供だっていうことではなく、子供っていう存在が、世間からどれくらいいかがわしい目で見られているのか、わかっていないということなんだ」
「……………」
(p.132)

「よかったの。たまたま可愛くて」
(p.150)

「な、なんのことかね……」
 動揺のあまり語尾がおかしくなってしまいました。
 古典の推理小説の犯人みたいです。
 意外と場にはそぐっているとも言えますが……
「しょ、証拠でもあるのかね……」
(p.165)

「………………」
 ええ。
 茫然自失としていても始まりませんね。
 では、これから撫子が悲鳴を上げます。
 ご清聴ください。
 せーのっ。
「ぎゃあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!」
(p.183)

「人間に自主性なんかあるか!ちゃんと面倒を見て世話をしろ!」
(p.204)

「周りの連中が信じられないくらい当たり前のことだろうが、そんなことでいちいち傷ついてるんじゃねえ!繊細過ぎるだろ、ああん!?」
(p.210)

「可愛いだけのガキなんぞ――我が身が可愛いだけのガキなんぞ、見捨ててやればよいのじゃよ。博愛主義もいい加減にしろ」
(p.249)

 確かに憑き物なら、落としどころもあったかもしれないけどね。
(p.256)

「本末は最初から転倒してるよ」
(p.270)

 気が変わり。気が変になりました。
(p.271)

「もしも違う形で出会っていれば――撫子と戦場ヶ原さんは、友達になれたかもしれないね」
「いやそれはない」
 即答で否定されました。
 歩み寄りの余地なく。
「悪いけど私はあなたのような可愛いガキが、昔の自分より嫌いなのよ、千石撫子さん」
(p.278)

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