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無限日記①

2009.01.03.01:38

2つ目の1時間小説。
2つ目にしてすでに続編に続くという体裁になってしまった上に、普通に1時間じゃ終わらなかった。多分1時間半くらいかかった。
まあ1時間ってのはとりあえずの目安ってことで、しばらくは適当にやってみようと思う。

この小説のマインドマップはこちら。
無限日記


無限日記①

「おはよー夢雄!」
という思春期の女特有の声が俺の脳に鳴り響く。
ここは神馬学園の教室の中の一つ。
俺はまだ目覚めていない頭を必死で働かそうと試みながら、声のした方向に首を向ける。
「なんだよー葉月。朝から声でけーよ」
「まあまあいいじゃん。あたしたちはまだ若いんだしさー。朝から元気にしなくちゃ!」
「しなくちゃ!って義務じゃないだろ別にー…」

葉月は俺の昔からの幼馴染で、家が隣ということもあって仲が良い。
腐れ縁なのかどうなのかはわからないが、幼稚園から高校まで、今のところすべて同じところに通っているということもある。
勿論すべてのクラスで同じクラスということもなかったし、今までずっと仲良しということもなかった。
よくよく思い出してみれば小学生の頃とかはかなり仲が悪かったな……
中学の2年だか3年だかでクラスが一緒になった時になんとなく話すようになり、それからは腹を割った話もちょっとずつするようになったって感じだ。

「そういえば今日さー、夢雄って暇?」
一時間目の授業。古文の浅原がよくわからない呪詛のようなものを唱えている最中、葉月は俺に話しかけてくる。
「なんだよ朝からあからさまに。ってか授業始まって十分くらいしかたってないのに朝から本当元気だよなお前」
「なんだよーこっちのやる気をそぐようなこと言わないでよーもー」
「はいはいなんざましょ」
「じゃじゃーん!じゃん!じゃん!葉月さんはネズミーランドのチケッツを手に入れたのだ!しかも二枚なのだ!」
味気ない古文の授業の沈黙を打ち破るような葉月の声。
あんまりにも楽しそうなもんなので、浅原が古典的なマンガないしはアニメよろしくチョークでも投げてくるのかとひやひやしたものだが、さすがに現実にそのようなことを人間はしない。
実際今そんなことやったら大問題になっちゃうしな。
先生でいるのも楽じゃない。
「え、え、え、もしかしてそれって一枚俺のってこと?てかお前どこでそんなもの手に入れたんだよ」
「いやー本当は家族で、っていうかママと一緒に行く予定だったんだけどね、ママは結局行けなくなっちゃったからさ。そこで誰を誘おうかなーと考えたんだけど、よく考えたら家の隣に暇そうにしているやつがいたなーって思い立ったわけですよ」
「思い立ったわけですか。っていうか暇そうなやつで悪かったな」
「実際あんた暇じゃん!中学の時から部活入ってないし家帰って何やってんのよ?まあそれはいいけどさ、そんなこんなで夢雄を誘うことにしたわけよ。夢雄ってさ、夢って名前がついてる割には人生に夢がないじゃん?ネズミーランドにでも行って夢というものがなんたるか勉強する必要があるとあたし思うな!ということで来るよね?」
「お前今さりげなくひどいこといったよな。俺にも夢くらいあるっつーの」
「えーそうなの?お姉さんそんなこと聞いたことないけど。ってそれはどうでもいいよ、結局来れるのかな?来れないのかな?」
「えー、いや、大丈夫だと思うけど……ってか俺で大丈夫なのか?葉月他にも仲いい友達とかいるじゃん。敦子とかさ」
「夢雄の頭とかは大丈夫じゃないと思うけど(笑)でも夢雄と一緒に行くこと自体はぜんぜん大丈夫だよってか若くてピチピチの女子高生と行けるってことにまず感謝してほしい気持ちでいっぱいですあたしは」
「来たよ葉月の恩義の押し売り商法。まあオーケーオーケー。今度の試験休み?」
「かなあ。日曜は込むと思うから来週の月曜とかそこら辺?」
「OK余裕。未来は俺らの手の中」
「なんか最近夢雄そればっか言うよねー。なにそれ?なんかの台詞?」

休日に二人でネズミーランドに行くなんてまるで普通のカップルみたいだが、でも実際こういうのは初めてじゃない。中学の終わりの頃も二人で卒業記念ってことで江ノ島に出かけたし、高校に入ってからも二人でちょくちょく近所に出かけている。
さすがにネズミーランドにまで行くことはあまりなかったけど、そういうことがあったからこそ俺は葉月の誘いに軽い気持ちで答えたのだ。

友達の一人はそんな俺たちの関係に対して、「おまえら付き合ってるんじゃないの?」とか普通に言う。
確かに俺たちは思春期真っ只中だし、そういう関係に発展してしまってもぜんぜん不思議じゃないってのはわかる。
友達の中にはこの時期に彼女をつくるために好きでも何でもないやつに告るやつもいるくらいなのだ。
でもいざそう言われると今一実感がない。
昔からずっと近所づきあいしているというのもあるのだろう。
幼馴染っていうとマンガではカップルの定番みたいに扱われているが、現実問題としては葉月とは親密すぎて恋愛には発展しづらいんじゃないかってのが俺の今のところの実感だ。
とは言っても俺は葉月の考えていることはよくわからない。
俺には本当に友達みたいに接してくるが、もしかしたら俺のことが好きだったりすることがあるのかもしれない。
そういうことは普段あまり考えないようにはしているが、時折そういう考えが頭をちらつく。
そうなるとシャイボーイな俺は普段とおりに接せなくなって、葉月はそれを不審がる。
そういう考えはやめよう---今のところこの関係で上手くいっているのだから。
頭の中でそのように呟いて、俺は現実世界の方に思考を戻す。


ネズミーランド当日。
俺は俺の中で出来る限りのまともな格好と思われる衣類を羽織り、待ち合わせ場所の東京駅で葉月を待つ。
葉月が「やっぱネズミーランドは開園前には絶対行かなくちゃ!」とかなんとかのたまっていたので集合時間が恐ろしく早い。
たまの連休くらいゆっくりしたいものだ。どうして女ってこういうアミューズメントなパークに行くのにすげー張り切るのだろうか。


葉月がなかなか来ないのでしばらく俺は立ち往生を食らう。
葉月は普段かなり適当なやつだが、時間はそれなりに守るやつだ。
早く来るということもないが、十分遅れることもない。
時間に厳しい日本ではわからないが、海外基準で考えればなかなか優秀なやつなんじゃないか、そういう意味では。
ただ今日はもうすでに十分以上遅れている。
自分から早く来いと言い出したのになんであいつが当たり前のように遅れているんだ……別にむかつきはしないが、こりゃ来たら菓子のひとつでもおごってもらないと割に合わない。
もうすぐ次の電車も出る時間だ。
そんなことを考えていると葉月の姿が見えてくる。
しかし何か様子が変だ。
どうしたのか?

A. チンピラに絡まれている
B. お財布を落としてしまった
C. 俺のためにご飯を買ってきた

どうやらAのようだ。
ここからではよくわからないが、いかにも僕態度悪いですよって感じの風貌のやつらに絡まれている。
B系っぽい感じの服を着た男が三人。
「なに?そっちがぶつかってきたんじゃん!意味わかんないんですけど」
俺が近づくと葉月が吠えている。
「いやそっちのほうが意味わかんねーし(笑)明らかお前の方がぶつかってきたんじゃん?馬鹿かよこいつ。あ、てかお姉さん一人?俺らと遊ばない?どうせ暇なんでしょ?よっしゃ決まりーお持ち帰りー」
男の一人が葉月を腕をつかんでくる。何やってんだあいつら。
「ぎゃははお前何いきなりナンパしてんの。マジウケるわー。ごめんねーこいつ馬鹿だからあんま気にしないであげて」
「なんでもいいけどお前早く謝ってよ。こっちも前がつかえちゃってるんだよねーお前のせいで。あははは。つか女一人の癖に歯向かうとかウケる。勝てるとか思ってんの?現実見たほうがいいよ?」
葉月は突然のことに戸惑いながら、悔しそうにそいつの目を見返している。
普段笑ってばっかりのやつだから、その顔がとても印象的だった。
周りのとおりすぎるビジネスマンは忙しいからかどうなのか、葉月のちらりとは見るけれども決してかかわりはしない。
俺は一瞬躊躇したが、葉月の元へ向かって走っていく。
あいつらは態度も悪そうだし、多分俺よりも強いだろう。さてどうするか。


「奇襲しかない---」俺はそう思った。
話し合いが通じるような相手でもないだろうし、やつらの進行方向は俺たちと一緒なのだ。
だったらあいつらに軽く攻撃を加えて、その隙に次の電車に乗って逃げるしかない。
ネズミーランドまで行けば人も増えるからさすがにあいつらが絡んでくるってこともないだろう。
捨て台詞くらいは吐いてくるかもしれないが、葉月と俺の安全はある程度保障されるはずだ。
幸い次の電車の発車時刻まではもうすぐだ。
俺たちが乗ってあいつらを乗せなければかなり差をつけることが出来る。
問題は俺があいつらに攻撃してかく乱することが出来るかどうかなのだが……

俺は出来る。俺にならやれる。
俺は自分にそう言い聞かせて、葉月の元に近づくと同時に男の一人の金玉を蹴り上げ、ポカンとした顔の葉月の手を奪いとってホームまで走る!
B服たちは突然のことにびっくりしたらしく反応が遅れている。
いける、いける、俺は行ける!
「葉月おはよう!お前来るのおせーよ」
「え、え、え、突然何、何!?」
「いーから走れ。追いつかれるぞ!」
後ろを振り返ると事態を把握したB服二人が追いかけてくる。
仲間の一人が金玉強打シンドロームにかかって悶えているんだからそいつの介抱でもしてやれよ、と思うのだが、そいつらは金玉を抱えてうずくまってる仲間をほったらかしでこっちの方へ向かってくる。
「てめーなんだよ急に。殺すぞてめえええ」
一瞬不意をついたとはいえ、男二人のB服は速い。こっちは葉月がいるから、どうしてもスピードでは劣る。
このままでは追いつかれてしまうが、さてどうするか。


「ちっ、だめだ。俺が葉月を背負って走ったほうが速い。ちょっと葉月俺の上に乗れ」
「え、ちょっ、なにす」突然言われた葉月は面食らっている。ただでさえよくわからない状況で走らされているんだから無理もないだろう。
「いいからちょっと黙って!」
葉月を背負い上げて、全速力で走って改札を抜ける。
かなり足に負荷がかかるが、俺は昔から走ることが大好きで、しかも長距離型なので一人くらい背負ってもなんでもない。俺は陸上部のエースなのだから。
一人で走っているときよりは明らかに遅くなるが、それでもそれほど足の速くない葉月に合わせるよりは速い。
中学の頃から陸上で足を培ってきてよかった---この時ほどそう強く実感したことはなかった。

間一髪俺たちは出発しようとしている電車に乗り込み、閉まった扉ごしにぜえぜえと息を切らしているB服たちを見る。
何か悪態をついているような気がしたが、電車の扉と突然の運動により息の上がった体ではそれを聞き取ることは出来なかった。
「…はぁはぁ……よっしゃ、成功だな……。焦った……」
「焦ったじゃないでしょ!!何よもう、いきなり……」
「…ふぅ……はぁはぁ……はは、まあなんだかんだで逃げれたんだからいいじゃん……あー疲れた」
「そういう問題じゃないでしょ!無茶しないでよ……」
葉月はよくわからないが、なんとなく涙ぐんでいるようだ。
B服に囲まれた緊張状態から開放されてホッとしたのだろう。
葉月をこんな風にさせたあいつらに怒りを感じながらも、とりあえず葉月になんともなくてよかった。
しかしあいつらもネズミーランドに来るのだから、ちょっと俺の行動は軽率だったかもしれない。
さっきは人が多かったからなんとかなると思ったけど、コケにされた人間が人前でおとなしくしているだろうか?
ましてやあいつらはキレる若者の代表格みたいなやつらだ。
人目なんて気にせず因縁をつけてくることだって充分考えられる。
「あー、しかしどうするかな。あいつらもネズミーランド行くとか言ってたし」
「そうだねー、ネズミーランドに行くのは危ないかも」
「ごめん、なんか俺が勝手な行動しちゃって」
「本当だよー、突然突っ込んでくるから何かと思ったし」
「……ごめん」俺は息を切らせながら謝る。
「んー、ま、いっか!今日はネズミーランドやめてどっか他のところ行きますか!こっち方面だと他にどこだろねー、江ノ島かなあやっぱ」
「え、いやそんな無理すんなよ。行きたかったんだろ?」
「でも実際ネズミーランド危なそうだしねー。今日は他のところの方がいいんじゃないかな」
「本当すまん。楽しみにしてたっぽいのに」
「夢雄は楽しみじゃなかったのー?あはは、うんぜんぜんいいよありがとう。それに夢雄さっきすっごくかっこよかったよ。これオフレコだけど。夢雄が調子付くから」
「本人目の前にいますが」
「気にしない気にしない。さて、改めておはよう夢雄!今日もいい天気だねー!」
葉月が気を取り直して大声で俺に挨拶をしてくる。いつも教室でしているような、元気の良い挨拶。
「なんだよー葉月。朝から声でけーよ」
さっきまで不良に絡まれていたのに葉月は今もう笑っている。
多分俺のことを気遣っているんだろう。いいやつだ、まったく。
「暇などっかの誰かさんと違ってあたしは過密スケジュールだからさ、あんまりぼやぼやしてる時間はないんだよね。今日はもう全速力で楽しまなきゃ!」
「だからさっきから声でけーよ。ここ電車だぞ。第一俺は暇じゃないっつーの。ちゃんと俺にはやることが……」


あれ、俺のやることってなんだっけ?
俺は中学高校と陸上部に属していて、エースだ。暇なんてそんなあるのか?・・・・・・何かがおかしい。
だとしたら俺はなんで葉月に暇人扱いされている?
家に即行帰ってるわけでもあるまいし。
何かが破綻している。
何が?
俺だ。

「いやー本当は家族で、っていうかママと一緒に行く予定だったんだけどね、ママは結局行けなくなっちゃったからさ。そこで誰を誘おうかなーと考えたんだけど、よく考えたら家の隣に暇そうにしているやつがいたなーって思い立ったわけですよ」
「思い立ったわけですか。っていうか暇そうなやつで悪かったな」
「実際あんた暇じゃん!中学の時から部活入ってないし家帰って何やってんのよ?まあそれはいいけどさ、そんなこんなで夢雄を誘うことにしたわけよ。夢雄ってさ、夢って名前がついてる割には人生に夢がないじゃん?ネズミーランドにでも行って夢というものがなんたるか勉強する必要があるとあたし思うな!ということで来るよね?」




今俺の目の前に広がっているこの光景はなんだ。
目の前では葉月がきょとんとした顔で俺の顔を見ている。


俺はこの光景を何回見ている?


theme : 自作小説
genre : 小説・文学

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